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大阪高等裁判所 昭和54年(行コ)39号 判決 1980年1月30日

控訴人

李純司

右訴訟代理人

伊勢谷倍生

被控訴人

法務大臣

倉石忠雄

被控訴人

神戸入国管理事務所主任審査官

川上厳

右両名指定代理人

坂本由喜子

外一名

右被控訴人主任審査官指定代理人

福添政治

外一名

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当裁判所も、控訴人の本訴請求をいずれも失当として棄却すべきであると判断するが、その理由は、次のとおり訂正・附加するほか、原判決の理由説示と同じであるから、これを引用する。

1  原判決二一枚目表二行目の「出入国管理令」から同二一枚目裏二行目の「ない。」までを「後記三説示の事実関係によれば、原告は出入国管理令三条の規定に違反して本邦に入つた者(同令二四条一号)といわざるをえないから(協定永住許可者については、特別法六条により同条一項各号のいずれかの事由に該当する場合でなければ退去を強制されない点で、一般外国人よりも退去強制事由を制限してその地位の安定がはかられているが、協定永住許可者の出入国及び在留については、特別法による出入国管理令によるべきものとされているから(特別法七条)、結局協定永住許可も出入国管理令四条において定める在留資格の一態様(同条一項一四号参照)とみるべきところ、そもそも永住許可に基づく永住とは、退去強制事由に該当する場合を除き、終生自己の意思に反して国外に退去させられることがないことを意味するものであつて、当然本邦に在留していることが前提であり、したがつて、協定永住許可者であつても、出入国管理令所定の再入国許可を受けないで本邦から任意に出国し、あるいは本邦から退去強制されたような場合には、その前提が失われたものとして、当該協定永住許可は当然に失効するものと解するのが相当である。そうすると、原告は、昭和四二年三月六日付で協定永住許可を受けた者であるが、昭和四三年八月一日再入国許可を受けないで長崎港から韓国に向け出国した時点で原告の右協定永住許可は失効したものというべきであり、したがつて、原告が再び本邦に入国しようとした同月一一日にはすでに協定永住許可者でなかつたのであるから、その時点での原告に対しては出入国管理令二四条の規定が当然適用されるものといわなければならない。)、原告の右主張は結局採用できない」に改め、同二一枚目裏九行目の「そして、」の次に「右の場合において、」をそれぞれ加える。

2  原判決二四枚目裏一一、一二行目の「韓国向け」を「韓国に何け」に、同二五枚目表末行及び同裏三行目の各「密行者」を「密航者」に、同二六枚目裏四行目の「韓国語には」を「韓国語については」にそれぞれ訂正する。

3  原判決二七枚目表六行目及び同裏五行目の各「原告」の前にいずれも「前示のとおり」を加え、同二七枚目表七行目の「消滅」を「失効」に、同裏一〇行目の「に対し」を「をして」にそれぞれ訂正する。

二よつて、控訴人の本訴請求をいずれも棄却した原判決は相当であるから、本件控訴をいずれも棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(唐松寛 藤原弘道 平手勇治)

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